クラウド型 と オンプレミス型 、そのメリット・デメリットとは?【第三回】

クラウド型 と オンプレミス型 |

第三回:どんなシステムを導入する?

法改正に伴い、すべての会社は来年1月の施行までに電子取引の改革に対応しなければならなくなりました。第一回では電子取引に関する改正内容について、第二回ではその改革に事務処理規程の制定・運用で対応する場合の懸念点等についてそれぞれ解説してきました。今回、第三回では電子取引記録の改ざんを防止できるシステムにはどんな種類があるのか、そのメリット・デメリットは何か、詳しく見ていきます。

・・・前回までのおさらい・・・

電子メールやインターネット経由で授受した電子取引情報は、紙面での保存が廃止され、電子データでの保存のみが認められることになりました。国税庁が定める電子データの正式な保存法のうち「改ざんを防止する事務処理規程を制定し、それに沿って運用する」という方法が一番コストが安く、現実的な方法であると思われましたが、この方法では該当のフォルダにデータを手作業で格納しなければならず、紛失などのリスクが懸念されます。また、運用期間が長くなればなるほどフォルダの量も膨大になり、作業はさらに煩雑になってしまいます。後々のことを考えると、別の方法で法改正に対応したほうが得策と言えるのです。別の方法としてはタイムスタンプの導入か、タイムスタンプに代わる改ざん防止機能を搭載したシステムの導入があり、コスト面で後者のほうが検討しやすいと想定されます。

国税庁 によれば、「記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム」「記録事項の訂正・削除を行うことができないシステム」で電子取引記録の授受や保存を行えばよいとされています。では、そもそも取引情報を管理するシステムにはどのようなものがあるのでしょうか。

取引情報を管理するシステム、いわゆる経費系のシステムは、大きく二つに分類されます。①クラウド型②オンプレミス型の二つです。詳しく見ていきましょう。

クラウド型

「クラウド」というその名前の通り、ブラウザを通じてインターネット上のシステムにアクセスし使用するタイプです。システム(商品)を購入するというよりは、システムを使用できるアカウントを購入するイメージです。使用にあたり、必要な取引データのアップロードを要します。

クラウド型のメリット
  • 初期導入コストを大きく抑えられる
  • インターネットさえあればどこからでも操作可能
  • 常に最新のバージョンが利用できる

クラウド型のメリットは何と言っても初期導入コストを抑えられることです。その手軽さから、まずは試しにと導入してみる企業も少なくありません。導入しやすい、始めやすいことがこのクラウド型の一番の強みと言えます。ほかにも、会社にいなくても、あるいはスマホやタブレットからでも、インターネットさえあればアクセスでき、利用できるのもメリットとして挙げられます。

クラウド型のデメリット
  • インターネット環境がないと利用できない
  • 基本的にカスタマイズはできない
  • 継続的に利用料がかかる
  • データがクラウドにあるためその保存期間はやめることができない

クラウド型のデメリットとしては、以上のことが考えられます。特に継続的に運用コストがかかることには留意すべきです(後述)。カスタマイズができなくても問題ない会社も多くあると思われますが、例えば銀行など支払の形態が複雑な場合は自社の支払形態をシステムの設定ですべてカバーできるか確認する必要があります。

また、4つめに挙げた「データがクラウドにあるためその保存期間はやめることができない」という点は、クラウドが導入しやすいシステムだからこその難点です。

現在、領収証や請求書などの取引情報は「7年保存」が原則となっています。これは紙面保存でも電子データでも同じで、少なくとも7年間は保存しなくてはなりません。紙面で出力せず、クラウド上でデータを一元管理したい場合は、そのデータの保存期間である7年をすぎない限り、システムの解約はできないということになります。今後ずっと利用すると決めている場合は問題ありませんが、「まずは試しに」で導入するには重たいデメリットです。

オンプレミス型

オンプレミス型とは、社内に設置したサーバにインストールして導入するタイプのシステムです。社内からそのサーバにアクセスすることで利用できます。「自社運用型」とも言い換えられ、業務内容に合わせた設定構築が可能です。

オンプレミス型のメリット
  • カスタマイズができる
  • セキュリティが強固である
  • 他システムと連携しやすい
  • インターネット環境に依存しない

オンプレミス型の最大の強みは、カスタマイズができることです。すべてのユーザが一律のシステムを利用するクラウド型に比べ、会社のニーズに柔軟に対応できるため、複雑な支払形態を有する会社などに向いています。すでに運用している社内、あるいはクラウド型の他システムとの連携も可能です。また、システム環境が社内のネットワークで完結しているので、外部からの攻撃等を受けにくくセキュリティが強いのが特徴です。

オンプレミス型のデメリット
  • 初期導入コストが高い
  • 実際に稼働するまでに時間がかかる
  • サーバなど設備を用意する必要がある

オンプレミス型は、大規模なカスタマイズを行う場合には特に、設備の導入までに時間を要します。契約後すぐに利用開始とはいかないのがデメリットの一つです。また、初期導入にかかる費用が高額である場合が多いのも特徴です。導入後はクラウド型のような月々のシステム利用料は発生しませんが、この初期費用が高いために導入に踏み切れない会社も少なくありません。

しかし、実は長期の運用を考えると「クラウド型のほうが安く済む」とは言い切れません。例えばシステムを使用する社員が多くかつ長期(数年)運用する場合などは、クラウド型の利用料の合計がオンプレミス型の初期費用を上回る可能性があるのです。オンプレミス型は初期費用が高額であるということに間違いはありませんが、会社の規模によっては長い目で見ると結果的には安く済んだ、というケースも大いにあり得ます。

まとめ ― 結局、どっちが良いの?
クラウド型オンプレミス型
初期導入コスト
ランニングコスト(利用料等)
稼働までの時間
カスタマイズ
セキュリティ
備考試しにと導入しても、データの保存期間中は解約できない可能性がある大規模な会社かつ長期の利用向き

クラウド型とオンプレミス型、必ずしもどちらのほうが優れているとは言い切れません。会社の規模や支払形態、運用期間などを考慮し、どちらのほうがより自社に合っているのか吟味する必要があります。また、電子帳簿保存法に対応していることも重要な前提条件です。そこも含めて、自社に最も適したシステムを選びましょう。

次回、第四回はシステム導入を悩んでいる方へ向けたお役立ち情報や、複雑な支払形態を持つ法人向けのセミオーダーメイドシステムについて紹介していきます。

電子帳簿保存法の改正や電子取引、経費システムなどについてもっと詳しく知りたい方へ

>> お問い合わせはコチラ