電子帳簿保存法の改正について
1.はじめに
電子帳簿保存法について、近年法改正が続いており、当初の要件から大分ハードルが下がり、比較的ペーパーレス化が実現しやすい状況になってきました。
現行の電子帳簿保存法では、紙の証憑をスキャナ等で読み取り、証憑と電子保存したデータを照合する定期検査は、原本の改ざんを防ぐために、2人以上の経理のご担当者で確認することが求められておりますが、2022年度からは要件が緩和 される事が発表されており、比較的時間や費用をかけずに、ペーパーレス化の実現が可能となりました。
ペーパーレス化に対応する為の準備工数や、タイムスタンプ業者との契約費用など、中々踏み出せない企業様が多かった中で、ペーパーレス化を急速に進める1つのプラス要素として、改めて法改正ポイントを纏めてみました。
本資料では、2021年度の電子帳簿保存法に関わる法改正内容と、弊社経費支払管理システムとの関連についてご案内させていただきます。
2.電子帳簿保存法の改定内容(2021年度)
国税関係書類に係るスキャナ保存制度の見直し ※ 4つのポイント
【2021年度:電子帳簿保存法改正】
① 事前承認制度の廃止
これまでの電子帳簿保存法は、以下の流れが基本でした。
【1】電子化する証憑を決定
【2】文書管理規定や電子化手順書等を用意
【3】電子帳簿保存法に対応した機器を準備(スキャナや会計システムなど)
【4】所轄の税務署に申請書を提出(電子保存を開始する3ヶ月前までに提出)
【5】電子保存の開始
改正1つ目は、この手順の【4】がなくなることを意味します。
従来は運用開始の3ヶ月前までに、所轄の税務署へどんな書類を電子保存するのかを表した「承認申請書」や、どういった手順で電子データを管理するのかを表した「事務手続きの概要」などの 書類提出が不要 になります。
② タイムスタンプ要件
改正2つ目は、タイムスタンプの要件が大きく変わります。
◼主に変更される3点
イ. これまで3日以内だったタイムスタンプの付与期間が、最長2ヶ月以内 に緩和。
ロ. 受領者がスキャナで読み取る際に行う国税関係書類への 自署が不要
ハ. 訂正・削除の履歴が確認出来るシステム等では、タイムスタンプの付与は不要
特に、3番目にある ハ については、システム側で「訂正又は削除を行った事実とその内容」が担保出来れば タイムスタンプの付与に代える事とする と明確な内容が記載されているため、弊社経費支払管理システムにて、電子帳簿保存法の要件が満たせるよう対応する事により、タイムスタンプは不要になります。
つまり、タイムスタンプの付与が絶対必要条件では無くなった という事を表します。
③ 適正事務処理要件
(相互牽制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等)の廃止。
適性事務処理要件とは
【相互けん制】
書類の受領者以外の者(経理担当者など)が書類を確認しなければならない。タイムスタンプの付与後、受領者、書類を確認した経理担当者以外の第3者が事後検査を行わなければならない。
【定期的なチェック】
1年に1回以上、各事務に係る処理の内容を確認する定期検査の実施。定期検査終了まで原本を破棄してはならない。事業所が複数ある場合、概ね5年以内に全ての事業所を検査する。
【再発防止策】
定期検査によって不備が発見された場合、経営者を含む幹部に報告しなければならない。
また、原因の究明及び改善策を構築する体制を整える。
改正3つ目は、上記の対応が全て不要 となります。今までは年1回以上監査での不正チェックや申請の間違い確認に複数名を配置する必要がありましたが、全て廃止となります。
④ 検索要件の緩和
これまでの検索要件
イ. 取引などの年月日、勘定科目、取引金額、その他国税関係帳簿の種類に応じた主要な
記録項目を検索条件として設定。
ロ. 日付または金額にかかる記録項目は範囲を指定して検索できること。
ハ. 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できること。
ニ. 請求書や領収書など、書類の種類別に検索できること。
(勘定科目別に検索できる場合も可)
改正による検索要件
イ. 検索項目は取引等の年月日、取引金額、取引先の3項目に限定。
ロ. 範囲指定や複数項目の組み合わせ検索機能の確保は条件付きで不要。
※ 条件:国税庁等が電子データのダウンロードを求めた場合に対応すること
改正4つ目は、上記の通り 検索要件が緩和 されます。検索要件もだいぶスッキリし、こちらも導入のハードルが下がる要因の一つとなります。
3.求められるのは企業のモラル
今回の法改正によってさまざまな要件が大幅に緩和され、電子帳簿保存を導入することが容易になりました。最低限の基準は国が決め、保存手順や内部統制は各社の判断に委ねられるということです。
これからは、企業が備えるモラルや統制が問われることになります。
税務調査が入った際、万が一隠蔽や改ざん等が発覚すれば重加算税の対象となります。
具体的には、電子保存された事項に関して、隠蔽、仮装された事実に基づく期限後申告、修正申告または更生などがあった場合、通常課される重加算税の額から更に、 当該申告漏れに対する税額の10%相当 の金額が加算されます。
金額面でももちろん痛手となりますが、不正を行なっていたという事実は、企業のブランドイメージを大きく損なう結果 となりますので、法改正があっても基本的な準備は大きく変わるわけではありません。
4.まとめ
今回の改正が施行されるのは、2022年(令和4年)1月1日予定 です。
現時点では、来年以降であれば今回申し上げた内容での運用が可能との予測です。
その為、数多くの企業様に於いては 2021年度は準備期間として対応を進めております。
また、今回ご紹介させていただいた内容ですが、ペーパーレス化を導入されると以下点について導入効果が見込めます。
- 経費処理工数が大幅に削減 (紙と電子が一致しているかダブルチェックが不要)
- 紙の保管が無くなり、一定期間保存する費用を削減(紙の保管 ※最低7年、移送や作業人件費の削減が可能)
- セキュリティの強化(紙が無くなり全て電子になることで、不正、改ざん、紛失の抑止を実現します)
- 業務効率化、文書閲覧が容易 (経費申請もシンプルに、過去の申請内容も一発検索が可能)
- 紙が無くなるため、コスト削減を実現(紙代、印刷代、文書廃棄費用 など)